どうやって「知らぬ間に」欲求不満に通じる道を進み、ついには失敗に終わるのか?

トレード初心者がこの世界に足を踏み入れたあと、進むべき道を決めるためにたどる典型的な思考過程をいくつか見ておこう。

●何て簡単なんだ。自分がやっていることが実際に分かれば、自分を妨げるものなどないだろう。

●相場もトレード法もほとんど何も知らないのに、勝ってお金を儲けられるのなら、勝つ方法をもっと学びさえすれば、着実に収入を得られると確信できるだろう。

●こんなに簡単に勝てるのなら、着実に収入を上げ続けるのも簡単でないはずがない。利益が得られるトレード機会を着実に特定するための手法かテクニックを見つけさえすれば、経済的成功という壮大な夢を実現する道を歩めそうだ。

●勝つ方法を学べば、トレード法が分かるだろう。

●勝つ方法を知るほど、損をしなくなるだろう。これらの言葉すべてが、「勝つこと」、したがって「勝つ方法を学ぶこと」が成功のカギだと考えている点に気づいてほしい。もちろん、ほかの言葉をいろいろ使って、同じ考えを伝えることもできる。

だが、どんな言葉使いをしようと、想定することはほぼ常に同じで、トレードでの成功は勝つ方法の知識次第、ということだ。勝つ方法をどうやって知るのか相場の適切な分析法を学ぶことによって、私たちは勝つ方法を知ることになる。

私は相場分析を、仕掛けと手仕舞いに最もふさわしい価格と時間を判断するのに役立つように、マーケット情報をまとめるツールや手法の組み合わせ、と定義する。言い換えると、次のことが分かる相場分析のことだ。

●どの銘柄を選ぶか(株、先物、オプション、FXのなかから最も成功する可能性が高いものは何か)

●どちらをクリックすべきか(買いか売りのボタン)

●いつクリックすべきか(仕掛けと手仕舞いに最もふさわしい価格と時間を)私が述べているツールと手法は、大きく次の三つのカテゴリーに入る。

A.テクニカル分析チャート上の幾何学的パターンで値動きを予測する(トレンドライン、リトレースメント、保ち合い、支持線・抵抗線、ローソク足など)か、価格と出来高のデータをさまざまな数式に代入して変動パターンを特定する(移動平均線、ストキャスティックス、RSI(相対力指数)、MACD(移動平均収束拡散手法)、ボリュームレシオなど)。

B.ファンダメンタルズ分析

需要と供給、評価モデル、公式を使って値動きを予測する。

C.ニュース経済報告かメディアが報道する時事ニュースに対して市場がどう反応するかを予測して、立てるトレード戦略。

「勝つことが成功のカギ」と考えて、そのために「相場分析をうまくやって勝つ方法を学べば、確実に成功できる」と思うことは、一見すると完璧に筋が通っている。実際、今述べた考えはすべて分かりきったことに思えるので、そもそも私がこんなことを指摘するのはちょっと変だと思うかもしれない。

その一方、こんな考えを持つと何か本当に困ることが起きる、というのでないかぎり、私がそんな指摘はしないだろうとも思うかもしれない。問題はここにある。しかも、それはとても理解に苦しむものだ。成功を、トレードで頼りになる収入を着実に得られること、と定義すれば、勝つ方法を学ぶことはそういう成功を収めるための重要な要素ではない。

実際、勝つ方法を学ぶことは不可欠ではあるが、着実な成果を上げるために学ぶべきほかのスキルに比べると、比較的小さな役割しか果たさない。勝つ方法を学び、それを知ることが、成功のカギにならないということがあり得るだろうか。残念ながら、答えはおそらく質問よりもさらに戸惑うだろう。

しかし、理由を説明する前に、私がどの部分に問題があると言っているのかを推論の順序に従って明確にしておきたい。「勝つかどうかは相場分析次第だ」という前提は正しいか。もちろんだ!相場分析のツールをうまく使えるほど、利益になるトレード機会を見つけられる。それでは、「着実な成果を上げるためには、勝ちトレードが必要だ」という前提はどうだろうか。

明らかに、これも正しくなければならない。勝ちトレードなしに、資産曲線を着実に右肩上がりにはできないからだ。勝つかどうかは分析次第であり、着実な成果を上げるためには勝ちトレードが必要だと分かっているのだから、分析がうまいほど着実な成果が得られると結論づけるのはまったく理にかなっているではないか。

確かに、理にかなってはいるが、完全に正しいとは言えない。この結論の問題点は、完璧なトレーダーの心理に近づいた程度に応じてしか当てはまらないところだ。つまり、トレードの本当の仕組みを理解していないし、成功に必要なスキルをすべて習得していない人は、自分の分析が良いか、極めて優れてさえいても、そのために長期にわたって利益が得られるようになるとは限らない、ということをあとになって気づく。

言い換えると、着実とはほど遠い成果しか得られない人でも、トレードで勝つことはあるし、驚くほど勝ち続けることすらあるのだ。以降で私が立証したいことは、たとえ相場分析で勝つ機会を特定できても、そのこと自体は資産曲線を着実な右肩上がりにする保証にはならない。着実な過程に必要なほかのスキルも備わったときに初めて、分析の質がそのまま最終結果に反映される、ということだ。そのため、相場分析が成功へのカギだという考えを行動原理にすれば、欲求不満に陥ることになる。せいぜい、「儲けては損する」程度を願うくらいで、最悪の場合にはほかの多くの人と同様に、どこに問題があるのだろうと思いながら、トレードでいら立つだけだろう

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